第5章 魔物の王
「明日、ナグル様が城下を案内してくれる事になったんです」
「……そう」
「水饅頭も食べるんですよ?」
ベッドに潜り込んで、二人向かい合いながらお話をする。
「本当はルナール様も一緒にと思ったんですけど…お仕事だって聞いて…」
本当はナグル様とルナール様と私と、三人でお出かけしたかったのだけれどルナール様は外せないお仕事が有るらしくて行けないらしい。
「ルナール様はお仕事を頑張ってるのに…ごめんなさい」
お仕事をしているルナール様を置いて行くのは申し訳ないのだけれど…
ルナール様の手がポンポンと私の頭を優しく叩いた。
「楽しんで…来て。それに、明日で、仕事、終わり…最後まで一緒、居れる」
「本当ですか?!」
明日のお仕事が終わればルナール様とずっと一緒に居られる。そうしたら、もっと色々お話ししたり出来るよね。もっと仲良くなれるかな。
嬉しくて笑うと、モソモソと動いてルナール様が距離を詰めて来た。額同士が触れ合いそうな距離。間近な位置でルナール様の瞳を見詰める。
「嬉しいです!」
「ん…僕も」
ルナール様も私の目を真っ直ぐに見詰め返す。視線が重なって、吸い寄せられる様に唇が近付いた。自然と重なった唇にお互い目を瞬いた。
次いでキスをしたのだと実感して、顔が真っ赤になった。
「はぁ…不思議」
ルナール様が私の手を取った。
「と居ると、ポカポカして、不思議な気持ちになる…もっと、触りたい、一緒に居たい…変な、気持ち」
私の指にルナール様の指が絡む。お互いにギュッと握り合った。
「私も、ルナール様と居ると楽しくて心が暖かくなります」
「……ホント?も、一緒?」
「はい!」
頷いて見せるとルナール様がとても嬉しそうに、良かった、と笑った。そして私を抱き締め、髪に顔を埋めて来る。
「明日、お土産買ってきますね?アモロ遺跡もしっかり見て来ます」
「アモロ…遺跡…」
そう口にしたルナール様の表情が僅かに曇った。そして私をギュッと抱き締めた。
「ルナール様?」
「アモロ遺跡は…駄目」
「え?」
聞き返そうとして顔を上げると、ルナール様は既に目を閉じていた。スゥと響く寝息と無邪気な寝顔に表情が緩んだ。
「ルナール様、お休みなさい」
私はルナール様の額に優しく口付けてから目を閉じたのだった。