第5章 魔物の王
「ルナール様、お仕事は如何ですか?」
私はお昼の時間を見計らってルナール様の執務室を訪れた。
「おぉ!姫様ではございませんか!」
「?」
手を止めて机から顔を上げたルナール様が不思議そうに首を傾げた。私は背中にバスケットを隠しながら、肩を竦めた。
「あの、お邪魔でしたか?もし良ければ…ルナール様と一緒にお昼をと思いまして」
「何と!?それは素晴らしい!今すぐ行ってらして下さいませ」
「仕事…」
不満そうに口にするルナール様をナグル様が強引に引っ張って立ち上がらせた。グイグイと背中を押してルナール様を部屋から追い出す。
「ささ、ゆっくりして来て頂いて構いませんぞ。何ならそのままお二人で…」
むふふ、と妙な笑いを浮かべて、ごゆっくり、と扉を閉められてしまった。ルナール様が大きな吐息と共に肩を落とした。
「あの、申し訳ございません…私、お邪魔してしまったみたいで…」
早く私の作ったものをルナール様に見て貰いたくて、気持ちが高ぶってちょっと調子に乗ってしまっていたかもしれない。やってしまった、と後悔に項垂れると小さな笑う様な息遣いが聞こえた。
「…良い、構わない」
その表情が優しく笑っていて、私もつられる様に笑ってしまった。
私が持つバスケットに気付いたルナール様が、無言で私からバスケットを取り上げた。
「…こっち」
歩き出したルナール様について行く。建物から出るとルナール様はお庭の方へと歩いて行く。お庭の中央には大きな噴水があって、そこから流れる水が光を反射してとても綺麗だった。
ルナール様はその噴水の縁に腰掛けて、隣をポンポンと叩いた。私はそこへ移動すると腰掛けた。
「素敵な所ですね」
ルナール様が膝に置いたバスケットを興味深そうに見詰めている。私はバスケットを開けた時のルナール様の反応が楽しみで仕方が無かった。
「ルナール様、開けてみて下さい」
ルナール様が言われた通りに蓋を開ける。
「…キリとラウが居る…」
実はあの後、人間界の料理に興味を持った料理長さんと話しが盛り上がってしまって、お昼を作ろうという事になったのだ。そして何なら天気も良いからお弁当にして、しかも可愛く…とあれこれしていて気付いたら…キャラクター弁当。
キャラ弁になっていた。