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人外王の花嫁

第5章 魔物の王


「蜥蜴、族…」

ルナール様は手にしていた本を脇へと置くと、ゆっくり話し出した。



昔この世界にはもう一つ国が有った。それは蜥蜴の国。蜥蜴族は攻撃的で血の気が多く、他の王と意見が食い違い争う事も多々あったらしい。
その中でも一番意見が合わなかったのが「人間」についてだった。蜥蜴族はことある事に人間の女を攫って来ては、欲の為に殺した。
他の王は余りにも行き過ぎた行為に止めるよう忠告したけれど、蜥蜴族は聞き入れなかった。最後には、人間の国に戦争を仕掛けて人間を奴隷にすれば良いとまで言い出した。

流石にそこまでになると、人間界も黙ってはいない。戦争に備えての準備を始めた。

一触即発な雰囲気の中、このままでは二つの世界が大変な事になると判断した王達が手を組んだ。
蜥蜴の国を滅ぼしたのだ。

そして今は悪魔の国、獣人の国、虫の国、魔物の国と四つの国になった。

それ以来、蜥蜴族は不吉の象徴、不幸を招くと言われて嫌われる存在となってしまったらしい。




「…そう、ですか…じゃあ、蜥蜴族はもう居ないのですか?」

私の問いかけにルナール様が頭を左右に振って否定した。

「まだ、居る、けど…」

それきりルナール様が口を閉じてしまったので私はそれ以上聞こうとはしなかった。ふと、随分時間が経っている事に気付いて私はモソモソとシーツの中へと潜り込んだ。

「教えて下さって有難うございました。随分遅くなってしまいましたね。寝ましょうか」

私がシーツを引っ張ってルナール様が入りやすい様にすると、ルナール様が首を傾げた。

「……交尾、しなくて、良いの?」

「こっ?!」

露骨な事を言われて私の顔が真っ赤になった。ルナール様の円な瞳が私を見詰めている。意地悪とかそんな事で聞いたのでは無く、普通に、不思議に思って問いかけたと言った感じだった。

「…ルナール様は、したいのですか?」

私の問いかけにルナール様の眉が僅かに下がった。それで私は理解した。

「無理にしなくても、良いと思いますよ?」

「でも、ナグルが…」

私はルナール様の手を握った。最初は体を固くしたルナール様だったけれど、体から力を抜くと移動してシーツの中へと入って来た。

「私達のペースで、ゆっくり行きましょう」

「……うん」

ルナール様が小さく微笑んだ。そして私とルナール様は手を握って眠ったのだった。
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