第5章 魔物の王
「…おかわり」
「はい!」
空になったカップにお茶を注ぐ。そして蜂蜜を入れて、まぜるために瓶を置こうとしたらじっと手元を見て来るルナール様に気がついた。
「あの、もっと入れますか?」
コックリと頷くルナール様。私はもう一度蜂蜜を手にするとカップに蜂蜜を入れる。これくらいで良いかなと手を止めたのだけれど、ルナール様はまだじっと蜂蜜を見詰めている。
「あ、あの、もしかしてもっと…ですか?」
コクコクと頷くルナール様に言われるまま、私は蜂蜜を入れ続けた。ルナール様が満足する頃には蜂蜜は瓶の半分まで減っていた。
ま、まざらない…
スプーンを差し込んで掻き回してみるけれど蜂蜜の粘り気でスプーンが重たい。結局、中途半端にまぜてはみたもののルナール様が急かすのでスプーンごと渡した。
ズズッと上澄みを啜ったルナール様は、プハッと満足そうな息を吐き出すとスプーンで底に残った蜂蜜を掬って食べ始めた。
その必死な姿に驚いてつい目を奪われてしまったけれど、気付くと笑いが込み上げていた。
「ふふっ、ルナール様は本当に甘い物がお好きなんですね」
スプーンを舐めるルナール様が微笑ましい。私の言葉にも答えずに無心で蜂蜜を味わうルナール様を私はずっと見詰めていた。
「ふぅ…」
満足そうな表情のルナール様がカップとスプーンを置いた。どうやら食べ終えたらしい。
「まだ有りますから、また食べましょうね」
「…うん」
コックリと唸いたルナール様に私も笑って頷いた。ルナール様の唇が濡れていて、私はつい手を伸ばしてそれを指で拭った。触ったそれは思ったよりべトリとしていて、私は濡れた指をペロリと舐めた。
「蜂蜜の味がしますね」
ルナール様がそれをじっと見詰めていたかと思うと、急に椅子から立ち上がった。そしてのろのろと歩き出す。私は何処に行くのかとルナール様を追いかけた。
奥へと進むルナール様を追いかけると、そこには大きなベッドが有った。