第5章 魔物の王
お二人の部屋です、と案内されたのは水色の壁に白の家具で調えられたとても素敵なお部屋だった。メイドさんがお茶の用意をしてくれる。
ナグル様がルナール様に何やら耳打ちしていた。
「…ですから、早速…」
私をチラチラと見ながら何やら話している。そんなナグル様の話しを面倒臭そうな顔をしながら聞いた後ルナール様は小さく吐息をついた。
「さて、それでは私共はそろそろお暇致しましょう。様、頑張って下さいませ」
むふふ、と妙な笑いを残してナグル様とメイドさんはお部屋を出て行った。静まり返る室内。ルナール様は相変わらず興味無さそうに宙を見詰めていて、私はそんな彼と二人きり。
どうしようと戸惑っているとキリヤ様から貰ったお土産を思い出した。
「ルナール様、ルナール様は甘い物はお好きですか?」
私の問いかけにルナール様がこちらを向いた。つぶらな瞳で見詰められて、どんなお返事が来るのかドキドキした。
「…うん」
コックリと頷いたルナール様に私は安堵と共にちょっと得意気になった。
「キリヤ様から蜂蜜を貰ったんですよ?とっても美味しいしんです。一緒にどうですか?」
荷物の中をゴソゴソと漁りながら、手に触れた瓶を引っ張り出した。キリヤ様の好きな蜂蜜。「も好きでしょ」と言われて箱でルナール様の国へ送ろうとした所を何とか数個に控えて貰った。
私はその瓶を手にメイドさんがお茶の用意をしてくれたテーブルへと向かう。
うん、このお茶に入れても美味しそう。
ハーブティーだろうか、カップに注いだそれに蜂蜜を垂らす。ゆっくりとまぜていたら、ルナール様がそばに来て不思議そうに私の手元を眺めていた。
「お茶にまぜても美味しいですし、焼き立てのパンに塗ってもとても美味しいしんですよ?」
椅子に腰を下ろしたルナール様の前へカップを置いた。ルナール様はそのカップを手にすると、クンクンと不思議そうに匂いを嗅いでいる。
私も自分のカップにお茶を入れて蜂蜜を垂らしまぜる。ルナール様のお隣に座って、それを啜って見せた。
「ん、美味しい!」
ハーブの良い香りに甘い味が良い具合に合わさっている。私は緊張した気持ちが解けていくのを感じた。
そんな私を見たルナール様が同じ様にお茶を啜った。
「?!」
そのままグビグビと飲み干したルナール様の姿に驚いて笑ってしまった。