第2章 悪魔の王
鋭い牙が私の肌を押す。私は想像した痛みに固く目を閉じた。するとその緊張が伝わったのか、アダマンド様が私の髪を優しく撫でてくれる。
「安心しろ、痛いのは初めだけだ」
私は小さく頷くと、頑張って体の力を抜くように努めた。プツンと肌が弾けるように裂けて牙が私の中へと入ってくる。
「んっ!」
肌が割ける痛みに小さく声を上げた。でもその痛みは直ぐに引いて、代わりにジンジンとした疼きが込み上げてくる。
「っ、あ…」
ズズッと吸い上げられると、段々と噛まれたところが熱くなってきて、体がフワフワと浮いているような。ぬるま湯に浸かっているようなそんな心地よさが湧き上がる。その頃には痛みは無くなっていて、ただ頭がぼーっとする感覚だけが残っていた。
「っ、はぁ…やはり、そなたの血は美味い…んッ」
ゴクンと私の血を飲み込む音がして、チラリと横目に見えたアダマンド様はとても満足そうな表情をしていて私も嬉しかった。
「あっ、ん…アダマンド様…」
たまらなくなってアダマンド様の頭を抱き締めた。
「はぁ、…何故そなたの血はこんなにも美味いのだ…」
アダマンド様は牙を引き抜くと、血で濡れた牙を舌で拭った。噛み痕から滲む血が珠になると、それを舐め上げる。
「んんっ」
「特に達した時のそなたの血の味は格別だ」
肌を舐められる舌の感触に体を震わせた。うっとりとした表情で私の肌をまた舐めるアダマンド様の手が私の腹へと触れた。
「知っておるか?」
お腹に触れたアダマンド様の手が、ゆっくりと円を描くように撫でる。
「血は快感を感じれば味が変わるのだ」
ゆったりと撫でる大きな手の動きが心地良い。その手が下腹部に移動すると、調度子宮が有るであろう場所で止まった。
「私のものをここにおさめて、子種を注ぎながら啜るの血は一体どれだけ見事な味がするのだろうな」
それを想像してゾクゾクと震えが走った。恐怖ではなくて、アダマンド様の精を受け入れる喜びを想像したのだ。私はこの時、確かにアダマンド様が欲しいと思った。
「さて、今日はこの辺にしておこう」
アダマンド様が小さく呪文を唱えると、魔法で私の体が清められた。スッキリとした感覚に安堵の息をつく。アダマンド様は私をそっと横たえると、自分も横になり私を抱き締めた。
そして二人で眠りに落ちたのだった。