第2章 悪魔の王
四日目。私はまた追い出されるようにしてアダマンド様の部屋を出た。でも今度はちゃんと自分の部屋の場所を覚えていたので、迷わずに帰ることが出来た。
「ちょっとしんどい、かも…」
昨日から何も食べていない。それにアダマンド様が吸われた血も余り回復していないように思える。こんな事は初めてだ。ふらふらする。
私はベッドに倒れ込むとそのまま力尽きるように目を閉じた。
「起きて下さい。アダマンド様が夕食を一緒にと言われています」
そう言って起こされたのは、既に夕方になった頃だった。気だるい体を起こしてされるがままに身仕度を済ませると案内に従って食堂へと向かった。
「、待っていたぞ」
辿り着くと、アダマンド様が手を引いて導いてくれる。夕食にと用意されたのは、もしかして血の入ったグラスでは無いだろうかと心配したけれど、目の前のテーブルには美味しそうな豪華な食事が並んでいた。一日半ぶりのまともな食事だ。
私のお腹がグゥと盛大に音を立てた。これはきっとアダマンド様に聞こえてしまったに違いない。
私は恥ずかしくなって顔を赤くすると俯いた。盗み見るようにアダマンド様の反応を窺う。
「っ、クク…ふはは!随分と良い音が鳴ったな?」
盛大に笑われて更に恥ずかしさが増した。きっと耳まで真っ赤に違いない。そんな私の様子を見て更に笑いを吹き出したアダマンド様は、私を椅子に座らせるのではなく自分の席へと連れていった。
「今日は私が食べさせてやろう」
私を抱き上げて膝へと座らせるアダマンド様。この部屋にはアダマンド様と私の二人だけじゃ無くて、召し使いの人とか護衛の人とかも居る。
私は皆の目が気になって、アダマンド様の膝から降りようとした。
「あ、あの…」
「駄目だ、逃がさぬ」
彼は楽しそうに逃げる私を捕まえると、召し使いに食事を取り分けるように目で指示を出した。運ばれたそれをフォークでさして私の口へと近付ける。
艶のある白身魚にホワイトソースが絡まって良い匂いがする。またグゥとお腹が鳴った。
「ほら、早く食べないか」
私は控え目に口を開けると魚を口に含んだ。久し振りの食事は本当に美味しかった。一度食べ出すと止まらなくなる。もっととねだるようにアダマンド様の服を引っ張ると、彼は嬉しそうに頷き私がお腹いっぱいだとねを上げるまでひたすら餌付けを行ったのだった。