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人外王の花嫁

第4章 虫の王


「ちゃんとお前達にも紹介しに来たよ」

キリヤ様が手を差し出すと、カサカサと大きな百足が足から体を這い上がった。楽しむ様に腕を回りながら手の平まで到着すると、百足は上半身を上げてキリヤ様と向かい合う。

「ん?ははっ、そうだね…まぁ、そう見えるけどちゃんと大人らしいよ?」

「キリヤ様?」

「あぁ、この百足がね。の事を子供なのかって」

「子供っ?!」

うぅ、ここでも子供扱いされてしまった。項垂れた私の周りを蝶が上へ下へとヒラヒラと舞う。それはまるで落ち込んだ私を励ます様な、そんな仕草だった。

「、手を出して」

キリヤ様が蜂蜜の瓶に指を入れて蜂蜜を掬うと、私の手の平にそれを擦り付けた。すると蝶が手の平に降りてきて、口から管を伸ばすと蜂蜜を吸い始めた。

「わぁ、ふふっ、擽ったい…」

一匹が吸い始めると、もう一匹もう一匹と手の平に蝶が降りてくる。あっと言う間に手の平は色とりどりの蝶で溢れかえった。
人間の世界では蝶とこんなに近くで触れ合える機会なんて無かったから、何だか感動してしまう。

「ん、そうだね。でも僕のだから…うん、分かったよ。時々は連れて来てあげるからさ」

キリヤ様の周りには色んな虫が集まっていて、私には聞こえない話しを何やらしているみたい。キリヤ様をじっと見詰める虫達は、時折り頷いたりして何だか微笑ましい。
すると急にキリヤ様の顔が赤く染まった。チラリとこちらを見たキリヤ様と視線が合って、キリヤ様の頬がより一層赤く染まる。

「ばっ、馬鹿!違う…っ、て、事、は無い、けど…」

キリヤ様の反応が不思議で首を傾げた。一体虫達と何を話してるんだろう。

「そ、そりゃ、まぁ…うん、そう、だけど…」

本当に何を話してるんだろう。そう思ってキリヤ様と虫達をじっと見ていると、花弁が目の端に映った。木から散っているのでは無くて、蜂が花弁を手に飛んできたのだ。
顔の前で花弁を持ったままに停止する蜂が何かを私に言っているみたいなんだけど、分からない。キリヤ様が助け船を出してくれた。

「その花弁を舐めてみなよ」

「花弁を?」

手を出すと蜂が私の手へ花弁を置いてくれた。それは先が少し濡れていた。キリヤ様の言う通りそこをペロリと舐めてみた。

「甘い!」

それは花の蜜だった。喜んだ私を見て色んな虫が沢山の花弁を運んで来てくれた。
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