第4章 虫の王
「送られて来たのは四人でね。特に泣き喚いて嫌がってる様な奴は居なかったし、本当に事情を理解していたのかは知らないけど、送られて来た女は王妃になれるって喜んでたよ」
私以外に人間の女性が…そう思うと少しズキンと胸が痛んだ。
「理解していようがいまいが、女に負担をかけるのには変わりないからね。女達に時間を与える事になったんだ」
「っ、ん、キリヤ様…」
相変わらず緩く緩く動くキリヤ様の高ぶり。触手のように自由自在に動くそれは私を興奮させ過ぎない様に、絶妙な動きをしている。
「僕達と生活をして理解して、それでも良いと思えるなら……だから、僕も女達に自分なりに優しくしていたつもりだったんだけどね…」
キリヤ様が動きを止めて複雑そうな表情を浮かべた。
「一番目は悪魔だったかな」
言われた言葉に首を傾げた。
「二番目はルナール、三番目は犬で…最後の余りが僕だった」
余りと口にしたキリヤ様が悲しそうで、私は心配になってキリヤ様の頬を撫でた。キリヤ様が私へと視線を向けると表情を緩める。
「悪魔の外見は人間の女が好むものらしいね。女達は黄色い声を上げて誰が悪魔の王妃になるか争ってたよ。それが女達の中で決まると次はルナールだった。まぁ、人間に見た目が似てるからね。三番目は癒し系とかで犬でさ」
癒し系とか言ってる奴に犬が血塗れで狩りをしてる場面を見せてやりたいよ、と笑った。
そして、キリヤ様は口を一度閉じると肩を竦めて苦笑いを浮かべた。
「最後に残った女は凄く不満そうだったよ。人間の女で虫を嫌う者が多いのは知ってたし、しょうが無いとも思ってた。それでも僕は少しでも好きになって貰えたらと…思ったん、だけどね…」
宝石だって服だって好きな物を与えたんだ、と目を閉じた彼が私を強く抱き締めた。
「虫の僕は気持ちが悪いんだってさ。変な臭いもして臭いって…だから近寄らないでっ、て。頻りに他の奴の王妃になった女達の事を羨ましがってた」
「っ…」
手足が細長くて節がある虫人。触覚と羽根、瞳も白目が無く、筋肉質の体にお腹は虫そのままに筋が有る。キリヤ様の口元は牙で唇が押し上げられていて、人間から見るとそれはとても異形なのだろう。
それでも…それでも…
キリヤ様にそんな事を言って欲しく無かった。こんなにこの人を傷付けて欲しくなかった。
私は力一杯キリヤ様を抱き締め返した。