第4章 虫の王
「そんな顔しないでよ、不細工な顔がもっと不細工になるよ?」
「ぶさっ?!」
不細工?!キリヤ様に不細工って言われた。そりゃ確かに私は美人ではないかもしれないけど、普通位だと思…そこまで考えてキリヤ様を取り囲んでいたゴージャスな美女達を思い出した。うん、私…不細工かもしれない。
「あー、もう、そんな泣きそうな顔しないでってば!面倒臭い」
キリヤ様が私をギュッと抱き締めた。
「あー…その、不細工は言い過ぎ、かも、しれないけど…でも、僕はお前の事…嫌いじゃないから」
「キリヤ様…」
喜んでもいいの、かな?でもキリヤ様が私を励まそうとしているのは分かったから素直に喜ぶ事にした。私もキリヤ様の背中に手を回して抱きしめ返す。手にキリヤ様の羽根が当たって、そこを優しく撫でた。
「僕が言ってる変な事って言うのは、お前を…殺しそうになった時だよ」
言われた言葉に、何の事か分からず目を瞬いた。未だに理解しない私に焦れたのか大きな溜息が聞こえた。
「お前がイくと、お前の匂いに皆が意識を持って行かれるみたいだから…悪魔も犬もそうだったんでしょ?犬の場合は特に大変な思いしたのを忘れたの?」
犬は本能で生きてる馬鹿だから、と嫌そうに口にしたキリヤ様は真剣な表情をしていた。私は言われて思い出した。そう言えば、アダマンド様が我を忘れて私の血を吸ったのも私が達した後だった。そしてラウルフ様も…
私の様子に、やっと理解したの、と呆れ顔なキリヤ様。
「僕は犬や悪魔みたいにはならない…と思うけど、一応ね。ちゃんと護衛には言ってるから。危なかったら叫びなよ?まぁ、お前は死なないらしいから心配は無いだろうけどさ」
「…はい」
意地悪だと思っていたキリヤ様だけれど、ちゃんと私の事を考えててくれたんだ。そう思うと顔がにやけてしまう。
「えへへ、嬉しいです。キリヤ様有難うございます」
「ばっ、馬鹿じゃないの?!ただ、新しい部屋が血で汚れるのが嫌なだけで、僕は…っ?!」
キリヤ様の言葉を最後まで聞かずにキリヤ様の唇へと自分の唇を重ねた。チュッと軽い音を立てたキスにキリヤ様が真っ赤なお顔で押し黙った。
「…お前、生意気。煽ったのはお前なんだからね?」
覚悟しなよ、と胸元に顔を埋めて来るキリヤ様にキャーと声を上げてみたら、煩いよ、と笑いながら怒られた。