第4章 虫の王
召し使いの人がお風呂上りの飲み物を置いてくれる。キリヤ様にもグラスを手渡し、他に指示はないか確認してから部屋を出ていった。
薄いピンク色をした飲み物。私はグラスを手にして匂いを嗅いでみた。果物みたい。私はグラスを傾けてみた。
「んんっ?!」
トロリとした飲み心地に甘いこの味は…桃だ!凄く美味しい!私は一口、もう一口とグラスを傾けた。キリヤ様がそんな私を見てとても満足そう笑うと、自分もグラスを傾けた。
「気に入ったみたいだね」
「はい、この国のお食事とか飲み物は本当に美味しいです」
「お前、他の国では苦労したみたいだしね」
その言葉にキリヤ様が私が悪魔の国や獣人の国でどんな食事をしていたのか知ってるみたい。私が不思議そうにしていると、キリヤ様が鼻で笑った。
「情報収集は基本でしょ?それに…まぁ、この国の料理が不味いとか思われると癪だし」
キリヤ様の触覚が小さく揺れた。意地っ張りな事を言う時に揺れるキリヤ様の触覚。きっとキリヤ様は私の為に、私の口に合う食事をわざわざ調べてくれたんだと思う。
オルガが言ってたキリヤ様の性格が素直ではない、と言ってた事が理解出来る。でも、分かってみればそんな所も可愛らしいと思える。
「飲んだらこっちに来て」
空いたグラスをテーブルへと戻すと、私はベッドに座るキリヤ様の元へと進んだ。お風呂から上がって掛けてもらった布一枚きり。私はそれを被ってキリヤ様の前に立つ。
「ほら、そんなのもういらないでしょ?」
「きゃあ!」
布を握っていた手を引っ張られて布が落ちた。そしてその勢いでベッドに倒れ込む。体を捻って起きようとしたら、顔の横にキリヤ様の手がつかれた。
「もし僕が変な事をしそうになったら、大きな声を上げて。分かった?」
「変な事、ですか?」
ペロリと口元を舐められた。
「さっきの飲み物の味がする」
キリヤ様はお酒の味がした。そのキリヤ様が私の胸に触れてくる。首元に顔を埋め、肌を舌で舐めながらキリヤ様は私の胸を揉み始めた。
「へ、変な事って…あ、あの、今、叫んだ方が良いのですか?」
ピタリとキリヤ様の動きが止まった。不機嫌そうに眉間に皺が寄っている。
「ねぇ、お前やっぱり馬鹿なの?何で今叫ぶのさ?!空気読みなよ!」
お、怒られてしまった。だってキリヤ様が変な事とか言うからじゃないと頬を膨らませた。