第4章 虫の王
キリヤ様と蜂蜜の話しを楽しんでデザートを終えると、ご馳走様をして私はキリヤ様と一緒に浴室へとやって来た。
「オルガ、手伝いは不要だ。お前は入ってくるな」
「…はい」
そう言ってキリヤ様はお一人で中へと入って行く。私は廊下で頭を下げたままのオルガが気になった。
「オルガ、色々と有難う」
「いえ…」
「オルガのお陰だよ?」
中からキリヤ様が私を呼んだ。
「行ってくるね」
「はい」
一瞬オルガが複雑そうな表情を浮かべた気がしたけれど、気のせいだろうか。キリヤ様が急かす様にまた私の名前を呼んだので私は浴室へと向かった。
「、早く来なよ」
キリヤ様はさっさと服を床へと脱ぎ捨てて、一人で浴室へと向かって行く。私は何と無くキリヤ様の服を拾って畳んでみたり、そこらへんを意味も無くウロウロしてみたり。
「ちょっと!何やってんのさ、早く来なってば!」
怒られて私はやっと服を脱いだ。そして布で前を隠しながら、扉から頭を出して中を覗き込んだ。すると、洗い場に腰掛けていたキリヤ様と目が合った。
「何ダンゴムシみたいに隠れてんの?」
「だって、だって…」
私の体がブヨブヨしてて気持ち悪いって言われたのを思い出して、キリヤ様の前に出るのが恥ずかしくなった。だって、確かにキリヤ様のおそばに居た虫人の女の人は皆筋肉質でスタイルが良かったもの。それに比べて私は…
「うぅー…」
二の腕を摘んでみた。プニプニしてる。お腹も気になって摘んでいると、キリヤ様が立ち上がってそばにやって来た。私は慌ててどうしようかと視線を泳がせる。そうこうしている内に腕を掴まれてしまった。
「もう、何やってんの。風邪ひくでしょ?」
私を引っ張り、中へとどんどん入って行くキリヤ様に必死について行く。洗い場の椅子に座らされて、頭から湯をかけられた。
「わっぷ…」
急な事に驚いた。顔の湯を拭うと、悪戯に口の端を引き上げて笑うキリヤ様と目が合った。キリヤ様、私の反応を見て楽しんでる。抗議に視線を送ると、重なった視線の先でキリヤ様が更に笑みを深めた。
「感謝しなよ。今から、王の僕が自らお前の体を洗ってあげる」
私はキリヤ様の言葉に顔が熱くなった。