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人外王の花嫁

第4章 虫の王


私へと視線を向けたキリヤ様が驚いた様に動きを止めた。そして側へくると私を抱き起こす。体が起きて溜まっていた血が口から零れた。少し息がしやすくなる。

「ごめ、なさ…キリヤ様の命令っ、従え、なく、て…清めっ、たら、キリヤ様と、仲良くなれる、て……でっ、も、私…」

「…いいよ、わかってるから」

キリヤ様が眉を下げて悲しそうな表情で笑った。私はその表情につられる様に小さく笑う。そんな私の額にキリヤ様が口付けを落とした。

「ショウコ、ちょっと待ってなよ。邪魔な虫を片付けて来るから」

オルガ、と呼んだキリヤ様の声にオルガが部屋に飛び込んで来た。キリヤ様の代わりに私を抱えたオルガは泣いていた。

「さて、説明して貰おうかな。ショウコは王妃のはずだけど?」

部屋の中の者が顔色を無くして震えている。その中で蜘蛛男が口を開いた。

「わ、私はただ、キリヤ様の代わりに…」

「僕が何時そんな事を頼んだの?命令した覚えは無いけど?」

低い威圧感の有る声に蜘蛛男が口を閉じた。

「し、しかし、キリヤ様は王妃様がお嫌いだったはず!だから我々は…」

「そうですわ!王妃様の目の前で私を抱いて下さったでは無いですか!」

虫の男の言葉に同意する様にあの夜、キリヤ様に抱かれていた女の虫人が必死で口にする。それを耳にしたキリヤ様の羽根が怒りにビビビッと震えた。

「誰がショウコを嫌いって言ったの?それに、お前との事はたはだの性欲処理でしょ?勘違いしないでよね」

キリヤ様の切り捨てるような返事に皆が押し黙った。

「さて、僕のものに手を出したんだから覚悟は出来てるよね?」

キリヤ様の言葉に、餌だと喜んでいるのか虫達がざわめいた。

「教えてあげるよ。ショウコを苛めて良いのは僕だけ。他の誰も、ショウコに手を出すのは許さない」

虫人達の足を這い上がっていく虫達。

「キ、キリヤ様お助け下さいませ!お助け下さいませぇ!」

蜂蜜を拾い、キリヤ様に抱かれていた女の人がキリヤ様にすがり付いた。

「あぁ、そうだった。お前と…お前は殺さないでおかなくちゃね」

キリヤ様の指示で蜘蛛男と女の人から虫が引いた。二人は額を床に擦り付けて謝罪とお礼を口にしている。そんな二人にキリヤ様は冷たい目線を向けていた。

私はそこで意識を失い目を閉じた。
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