第4章 虫の王
「う、うぐっ」
横へと剣を引いたらお腹の中のものが零れ出た。ゴポリと口から血が溢れる。部屋に広がる血の匂い。
「っ?!」
その動きには流石に男達も動揺した様で、一瞬私から離れて距離を取った。
「っ、この雌、自分で腹を裂きやがった!」
「お、おい、不味いんじゃ無いか?」
「し、心配無いだろ、キリヤ様はこの雌がお嫌いなんだから」
どうする、どうする、と男達が慌てる中。蜘蛛男が私の下半身を引っ張った。
「ぁがっ」
「まぁ、大人しくなって良いのでは無いですか?」
引っ張られたせいで更に裂けた腹から内臓がズルリと零れ落ちる。蜘蛛男はそんな事も気にならない様で、力を無くした私の下半身を引き寄せるとその足を割って自身の性器を擦り付けた。
こんなになっても私を汚そうと言うの?私は私から離れてしまった下半身を見詰めて絶望に涙を流した。
「では…」
ニヤリと笑った蜘蛛男が私の入り口へと触れた。そして力を込めたその時、蜘蛛男の手に虫が這った。驚いた男が私から手を離す。
「な、何だ?!」
ザワザワと闇の中に沢山の気配を感じた。
「ギャアアァァ!」
急に一人の男から叫び声が上がった。見れば男の足を無数の何かが這っていた。百足だろうか、蜘蛛も居る。他にも見たことが無いような虫が沢山、男の足を這い回っていた。そして力無く崩れ落ちる男が大量の虫に飲まれて消えた。
気付けば床は虫で埋め尽くされていた。ポトリと何かが落ちて来た。私はそちらに目を向けて驚いた。床だけじゃない、壁に天井に、全てに虫がひしめいていた。
虫に飲まれた男から興味を無くしたように虫が離れて行く。残ったのは男の骨だけだった。
怖くない、さっきの虫人達の行為に比べたら……私は思考能力が鈍っていた。それでも部屋を覆う虫達のお陰であの恐怖から逃れられたのだと思うと、安堵の思いしか湧いて来なかった。
ギィと音を立てて扉が開いた。虫達がその人物が通る道を開けるようにザザっと移動する。
「ねぇ…お前達何をしてるの?」
そこに立っていたのは怒りに真っ赤に目を染めて顔を歪めたキリヤ様だった。キリヤ様やっぱり怒ってる。でも、それでも男達を受け入れる事が私には出来なかった。
「ごめ、なさ、キリっ、さま…」
貴方の命令だとしても私は男達の言う事を聞くことが出来ませんでした。私の口からまたゴポッと血が噴き出した。