第5章 過去
彼は戸惑っていた。
私に手をかけた事を後悔していたのだろう。
私もそこで大人しくしていればよかったのだ。
『亜煌君。』
私が呼び掛けるだけで彼は嬉しそうだった。
「な、なに??燐ちゃん、どぉしたの??」
『亜煌君なんか、死んじゃえ。』
彼の顔が凍ったのを覚えてる。
彼は私に手を伸ばしたかと思うと、首ではなく、頭を掴んだ。
私の頭をつかんで、地面に押し付けた。
そしてサバイバルナイフを私の背に突き刺した。
そこから先は知らない。
気付けば病院のベッドの上だった。
目を覚ました時には、私はもう、一人だった。