第15章 人生初の..デ、デ..?
と、真っ赤な顔の理科子ちゃんは、焦って、超焦げたクッキーを持つ私の手を、グイッと菜太郎の前に出した。
[えっ!!理科子ちゃん私はーー]
と、チラッと菜太郎を見たら、ほんの一瞬だけ、意地悪く笑ったのに私は気付いた。
..どーせ私はあんたの言う通り、全部クッキー焦がしましたよ。
[ーー]
さっきみみに言われたママの話が、重く残っていた。
[菜太郎君!この人のクッキーなんか受け取んなくていいよお!]
みみが入ってきて、私は眉を潜めた。
[ね、ほら見てえ!みみのクッキーとこの人の言っちゃ悪いけどお、恥ずかしいクッキー!...どっちが食べたいの?]
上目遣いで聞くみみに、きゃああっ!と、みみのクッキーを絶対選ぶと思ってるくせにわざとらしく盛り上がるみみ達。私はもう早くここから逃れたかった。痛かった。
そしてみみは、勝手に私の袋から黒いクッキーを取り出し、自分の白くて、甘い匂いが広がるクッキーと並べて出した。
[選んで、菜太郎君?]
理科子ちゃんが、もう、行こ、と私を気遣って腕を引くのが分かった。
ーーーその瞬間[しつこい]
[え?]
低い声と高い声が聞こえたと思ったら、菜太郎に腕を掴まれた。
[え、っ]
心臓がバクバクした。多分びっくりしたせい。そして、手の大きさに驚いたせい。
[な、菜太郎君?]
みみが言った。
[ああ、ごめんねちょっと。で、どっちか選んでって?]
菜太郎は天使のようににこりと笑った。だけど、その声はどこか少しサラサラとしたものだった。
[うん!!選んで選んでえ!!]
とまたぱあっと明るくなるみみ。
フッ、と菜太郎が微かに笑った。その手にはーー
[みみの!?]
その手には白くて可愛らしい、綺麗なクッキーがあった。
当たり前だ。そんなの。分かってる。分かってるから、はやく、はやく手離してよーー..!
[僕は、このクッキー、]
高い声に、甘みを持たせてそう言った。そしてーー
[ちょっ、菜太郎君...!!?]
菜太郎は、勢いよく、白いクッキーをあげて、そしてーーー
ばんっっっ!!!
[...........え]
床に、投げつけ た。
ーーそして、こう言った。
[なんか、大っっっっっっ嫌いだ]