第3章 光と影
それからエミリーは9歳の誕生日を迎えた。しかしここにはバースデーケーキもプレゼントもなかった。それはばれるといけないからというのもだった。これも仕方がないのだと言い聞かされたエミリーは頷くしかなかった。
そしてこの日は いつものスーパーとは違う所で万引きすることにした。いつもの所だとばれてしまうからだ。
「エミリーにはピーナツバターを盗んできてもらうぞ。」
ジャックの指示によりエミリーはメイソンとスーパーの近くで万引きを試してみた。エミリーは心の中で呪文を唱え透視でスーパーを見渡すとお目当ての商品を浮かせてばれないように外に出して見せた。そして急いで車に乗り込むと車は一般道路から高速へ入った。
ジャック以外のみんなは盗んだピーナッツバターをパンに塗り朝食として食べていた。
「ジャックのも取っておくから休んで食べろよ。」
ベンジャミンがそう言ったのでジャックは”ああ”と短く答えただけだった。
「ねぇ、これからどこに行くの?」
エミリーがジャックに聞いた。
「これからしばらくバカンスだな。ハワイに行くぞ!」
ジャックは嬉しそうにそう答えた。
「やったー。」
とガッツポーズを取るエミリーに対してメイソンが不安そうに聞いた。
「でもこの車はどうするんだ?」
「大丈夫さ。この車は元々レンタカーだからな。一度返して帰ったらまた別の車でも借りるさ。」
ジャックはそう言うとラジオを付け始めたが五番街のニュースが流れたため消した。
「この車を返して空港までは歩きだな。俺達もまだそんなに世間には知られてはいないだろうから大丈夫だとは思うが一応変装はした方がよさそうだな。メイソン頼んだぞ!」
「OK!任せといて。」
ジャックの言葉にメイソンはウィンクして答えた。
彼らはこれからハワイで有意義な時を過ごすことだろう。ここからはしばし事件のことは忘れてもらいたい。こうして車はレンタカー会社へと向かったのであった。