第9章 交差する闇、絶壁の霹靂
翌日になった。エミリーは気が付いたら壁にもたれかかって座っていた。目を開けたら辺りが明るくなっていて小さい窓から光が差し込んでいる。
ガチャッ
「ほら、朝飯だ。」
男がドアを開けてやって来た。手にはお盆が乗っており、お盆の上にはカップに入った牛乳とベーコンエッグとパンが乗っていた。
「歯ブラシはどこにあるの?これじゃ歯を磨けないじゃない。」
エミリーは冷静に聞いた。
「それはここにはない。君の輝かしい頭脳を活かして歯ブラシを取ってくるんだな。この施設のどこかに隠してある。そんなに気になるなら自分で探せばいいじゃないか。っていうかそんなことか?プッ。」
男が笑った。
「そんなことで悪かったわね。」
エミリーはムッとして足でけり上げようとしたが鎖が巻きつけてあり男には届かなかった。
「あははっそれで攻撃したつもりか?せいぜい顔でも洗って小奇麗にしとくんだな。今日は食事が済んだら大事な任務を行ってもらうから覚悟しとけよ。」
「大事な任務ですって?」
エミリーが男に聞いた。
「そうだ。大事な任務だ。おっと俺はもう行かないと。それじゃあ食事が済んだらそこに置いといてくれ。」
バタン!!
男が去って行ったあとエミリーは床に置かれた食事を見つめた。牛乳の入ったグラスにはストローが挿してあるがベーコンエッグの方はフォークやナイフはつていなかった。
「なるほど・・・これを口で食べろってことね。上等じゃないの。」
エミリーはしゃがんでお皿に顔を近づけてベーコンエッグを啜って食べた。みるみるうちに胃の中に流れ込んでいく。そして牛乳を勢いよく啜った。
「ふう~終わったわ。」
食事が終わり暫く考え込んだ。任務とは何か?これから脱出するにはどうすればいいのか?とりあえず歯ブラシと歯磨き粉だけは手に入れたいと思った。
「さすがに虫歯だけはごめんよ。昨日といい今日といいまだ歯を磨いていないもの。」
エミリーはまずドアに目を向けてくまなく観察することにした。