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サンロクゴ

第2章 2月【手作りは特別】ハイキュー/西谷夕





「ノトー!はい、チョコムース」
「ありがとー!私はね、チョコタルトだよ」







バレンタインが近づくと女子たちは胸がそわそわし、始まりだす駆け引き。

『今年、どうしよう。みんなに配る?』
『んー私たちだけでいっかなぁ』
『オッケー。じゃあ5人分だね!』

2月13日の夜に行われるのは、スーパーでの生クリーム争奪戦。
2月14日、女の子は紙袋の中に甘い匂いを忍ばせる。

そして教室を舞台に、パーティーが始まるのだ。
男子から女子まで満遍なく、クラスメート全員に愛を売り込む「抜け駆け」な天使もいれば、ノトのように仲の良いお友だちだけで楽しく分け合いっこをする子もいる。



「センパイに、告白するの?」
「うん。連絡したら、会ってくれるって。もうすぐ卒業だし、後悔したくないから…」


もちろん、中には勇気を持って好きな人に告白する子だって。




すごいな。尊敬するな。


私は恋い焦がれた想いを、ずっとずっと胸に秘め続けている。













頭の中にアイツのことを考えていたから。
姿を見つければいつも以上に胸が高鳴った。

「ノトー。俺のチョコは?」

来た。来ると思っていた。
中学から一緒の、アイツ。


「残念でした、西谷にはないよっ」
「なんだよ。去年は『来年ね!』なんて言ってたじゃんか。潔子さんは…くれねぇよなぁー!あー、チョコ…!」




私が烏野高校を進路に選んだ動機はあまりに不純だった。


西谷夕が行くと言ったから。



『お前も烏野?』
『う、うん。家近いし!それにね、制服が可愛いの!』
『だよな!可愛いよな!!』
『う、うん…』

可愛い女子を目の前にするとすぐ張り切るアイツが、私のことを好きだなんて気持ちは、これっぽっちもないんだろう。見ていれば、誰にだってわかる。



ドクンドクンと、胸が高鳴った。
本当は、想いを込めたチョコをあげたくてあげたくて仕方がない人が、今目の前にいる。



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