第1章 1月【おもち】黒子のバスケ 紫原/火神/青峰
紫原敦
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先月、街中に流れていたメロディーは「merry x'mas and HAPPY NEW YEAR」
ずっとずっと待っていた。
12月31日、小さな荷造りとポップな柄のボールケースを持って、遠距離にいる敦が地元に帰ってきた。
敦の親と一緒に駅まで迎えに行く。
背の高い、大好きな人の姿を見つけた瞬間におかえり!って飛びつきたかった。ぐっとこらえた。
頭をぽんって撫でられる。嬉しい。
向こうには、3日に帰ってしまうらしい。
短いな。
いつもバスケの練習ばかりの彼と会えるこの日を、ずっとずっと待っていた。
31日の夜はお互い家族と年を越す。
1日は初詣に行って、初売りに付き合ってもらう。
人混み疲れたーってヘトヘトな敦を、ちょっと休んでてってベンチに座らせて、お菓子の袋をたくさん買ってきたら目を輝かせて喜んでいた。
次の日は、私の部屋でひたすら一緒にゴロゴロ。
テレビを見ながら特番に笑って、新春ドラマに涙して。
敦はひたすらお菓子を食べて、笑っては、少し寝て、起きてはたまに、キスをする。
幸せ。
遠距離恋愛だからこそ会えたときは何倍にもなる、幸せと好きって気持ち。
しばらくすると、あんなにあったお菓子が底を尽きてしまった。
敦はえー?って、泣きそうな顔で見つめてくる。
絶対わざとでしょ、その顔。
彼は私のキュンとするスイッチを、知らずのうちに押してくる。
「『ハナモチ』あるけど食べる?」
「ほんと!?食べるー!」
年末から人気で売り切れ続出、おもちの食感のアイスを敦のために大事に取っておいた。やったね。
待ってて。
そう、立ち上がった。
そしたらぐっと、腕を掴まれる。
「ねぇ。あるよーここに美味しそうなの」
そのまま腕の中に引き込まれ、抱きしめられる。
愛おしむように力強く、潰さぬようにふんわりと。
敦はにやっと笑うと、私のほっぺに噛り付いた。
「おもち」
ペロリと舌で頬をなぞれば、そのまま唇へ。
「大好き、ノトちん」
この幸せが、ずっとずっと側にあればいいね。
「お返し!」
敦の頬が潰れるくらいの強く愛のあるキスを。
隣に温もりがある幸せを、強く深く、噛みしめる。
大好きだよ、敦。