第2章 スターゲイザー
「いくよ」
呆気にとられるワシの手を天川の冷たい手が割と力強く握り、脚が地面を駆け出す。
「お、おい!どこ行くんじゃ!ていうか、一体どこから」
「今日は木曜日よ、夏目くん」
ワシの質問には一切答えず、天川は鈴を鳴らす。風に靡く髪がまたシャンプーの香りを漂わせた。
遠くの方で男たちの悔しそうな声が聞こえる。
この女、マジか。
ワシよりは遥かに弱いが、やつらだって喧嘩慣れしている筈じゃ。それをいとも簡単に放り投げてしまうなど。この細腕のどこに、そんな力が…。
天川はまた心を読んだのか、顔だけこっちを向いて目を細めた。
校門まで戻ると冷たい手はするりと解かれ、天川はようやく体ごとこっちを向いた。
息ひとつ、髪の毛すら乱れていない。やはり宇宙人なのだろうか。
「また会えたわね、夏目くん」
嬉しそうに笑う宇宙人女に、俺はただため息しか返せなかった。