第2章 1月。
新一君の家に着くと、時計はもう6時を指していた。部活が終わってダッシュで来たけど、やっぱりこの時間だよね。
玄関まで来てくれた新一君に「本当におめでとう。遅くなってごめんね」と頭を下げる。
「いいよ。ありがと」
いつも通り優しい対応だけど、何かが違う気がする。誰もいないリビングを通り抜けて3階の彼の部屋にたどり着いた。
「ねぇ、新一君は、私のどこが好き?」
何度も尋ねた問い。彼の返事はいつも「全部」
全部って何?
「唯は俺のどこが好き?」
質問に質問で返されて、思わず言葉に詰まった。全部って、言ってくれない……?
「優しくて、私のこと考えてくれて……」
しどろもどろになった私の目が、新一君の強い瞳にぶつかった。
「優しくしてたら唯は俺のこと好きでいてくれる? でも、結局唯が一番大切なのは、サッカー部なんだろ?
初めて唯を見たのは試合の日じゃない。うちと練習試合させてくれって、毎日監督に頼み込んでる姿だった。
本当にサッカー部が好きなんだなって思って、そんなマネージャーがいる部なら試合したいって俺から監督に頼んだんだ。