第6章 5月。
聞きたいことは色々あるんだけど上手く出てこない。
「今日はちょっと寒いね。唯さんの家、入れてくれない?」
当たり前みたいに手を繋いできた星夜の提案に、まぁいっか、と思って部屋に招き入れた。
随分と男らしくなったけど、私の中では13歳の星夜が重なる。
「お茶でいい?コーヒーは、飲めないよね」
「いつまでも子どもじゃないんだよ。コーヒー、下さい」
むきになるところが子どもなんじゃない、と思いながらコーヒーを注ぐ。で、何だっけ。迎えに来た……?
じゃあこれは偶然じゃないってこと?
部屋に響く高い音と振動が着信を知らせる。はっとしてスマホを取り上げた私の手から、するりとそれは奪われた。
ディスプレイには、「正木さん」
ハンズフリーボタンを押して高く掲げられたスマホは、私には到底届かない。
「唯、今から会えないか? 君を抱きたいんだ。あいつのことは大丈夫だから」