第6章 5月。
そういえば今日は、星夜の誕生日だ。確か20歳になったはず。
公園の出口に差し掛かって、空を見上げた。私のマンションから漏れる光と背中のビルの大群に圧倒されて、瞳に映る光はあまりにも弱い。
もう一度、あの星空が見たいな。すっかり汚れちゃった私の目にも、前と同じように映るんだろうか。
ひとつため息をついて歩き出そうとしたら、黒い影に行く手を塞がれた。
「きゃっ……」
変質者……?
「夜の公園は危ないよ。唯さん」
私と同じだった身長は頭ひとつ分追い越されて、声変わりも済んだ。雑誌から抜け出してきたみたいなイケメンは、間違えるはずがない。今思い出してたんだもん。
「星夜……? 何してるの?……あ、誕生日おめでとう」
ぽかんと見上げて思い付いた言葉を発した私に、星夜は満天の笑顔を向けた。
「覚えててくれてんだ。ありがとう。でも何してるのはひどいなぁ。やっと迎えに来たのに」