第6章 5月。
大学に入ったばかりのゴールデンウィーク。生まれて初めての一人旅は、日本で一番星が綺麗に見えるという田舎町だった。
星だけが目当てだったから昼間はすることもなくてぼんやりと過ごしていたら、宿の息子が「何もない所ですけど、案内しましょうか?」と声をかけてきた。
都会でも滅多に見かけないような整った顔に一瞬目を奪われて、退屈していた私は頷いた。成長途中の身体は小柄で、私の方が力は強そうな中学生。
名前は星夜っていったっけ。
滞在していた10日間、昼間は子どもみたいに野山で遊んで、夜は毛布に包まって一緒に空を見上げた。自然も都会も好きで都内でも有名な公園の前のマンションを借りたこと。でもやっぱりこことは全然違うって言ったことを覚えてる。
頭のいい子だった。僕もいつか東京の大学に行って研究者になるんだって呟いた横顔に真剣な目。どうしてかな。はっきりと思い出せる。
でもやっぱり子どもだよね……お互い様だったけど。
最後の日「学校の友達と遊ばないの?」って尋ねたら「あいつら子どもだから」って答えた彼。私は馬鹿にして笑ったんだ。
「自分だって子どもなくせに」