第2章 1月。
「はいはい、約束だからね」
余韻もそこそこに追い立てられて、つまらなさそうな顔で新一君は机に向かう。
受験生なんだから、もちろん勉強してもらわなきゃ。私と会っているせいで落ちることになって欲しくないもの。
「唯は退屈じゃないの?」心配してくれる新一君に、鞄から取り出したサッカーボール型のフェルトを広げて見せた。
「引退した先輩たちにお守り作ってるんだ。うちは就職、進学色々だけどね」
弱小サッカー部のマネージャーの私。新一君の学校みたいに強くはないけど、先輩たち一生懸命頑張ってきたんだ。だから私、これからも応援したい。
「手作り……? いいな。俺も欲しい」
「え? 新一くんにはちゃんと本物のお守り買ってあるよ。学業の神様だから、きっとご利益あるよ」
私の手作りなんかよりきっとご利益あるよ。新一君には絶対受かって欲しいもん。
「そっか。ありがと。冗談だよ。
人数多いのに大変だな。頑張れよ」
微笑んで新一君は教科書に目を落とした。
私もお守り作りに集中しよう。
先輩たち、喜んでくれたらいいな。
一つ上の先輩たちが作ったサッカー部は同好会扱いだった。大会にも出られなくて先輩たちは一度でいいから強豪チームと戦ってみたいって言ってたんだ。
その願い叶っての引退試合が、新一君との出会いだった。初めて使ったユニフォームを洗濯してたら後ろから声をかけられて、連絡先を渡されたっけ。一目ぼれ、なんてされるほどの容姿だとは思えないんだけどな、私。