第4章 3月。
恥ずかしくてこくんと頷いたら、顎の下にかかった手に上を向かされて、薄い唇が近づいてきた。
「んっ……」
初めての感触に硬直する。「唇開いて」という言葉に従ってそっと開くと温かくて艶めかしい舌が私の咥内を味わってきた。背中からじんわりと登ってくる快感に力が抜ける。
「舌出して」なんていう恥ずかしい命令にも逆らえない。
彼の唇は私の舌を挟んで吸い上げる。
「美味しい」と耳元で囁かれて、私は初めての声を上げた。
ファーストキスは、私の苦手なブラックコーヒーの味。
頭が痺れるのはカフェインのせい……?
放心した私の肩とお尻の下に腕が差し込まれて、賢一さんに軽々と持ち上げられる。運ばれていく場所は解っていたけど、恥ずかしくて目を逸らした。
いつもダブルベッドの端と端で落っこちそうになりながら眠っていた二人。今日は真ん中に降ろされて、上から賢一さんが覆い被さってきた。