第4章 3月。
「どうして、他の人を、抱くんですか……?
私は人形じゃないのに。飾っていて欲しいんじゃなくて……あの人みたいに…………」
それ以上は何も言えなかった。
結婚といっても未成年の私が彼に養ってもらっている、面倒を見てもらっていることは事実で、彼に捨てられたらどうして生きて行けばいいのかわからない。
子どものくせに女として見て欲しいだなんて、堪らなく恥ずかしいことを言ってしまった。
「まいったな。知ってたんだ」
頭の上から賢一さんの言葉が降りかかる。
やっぱり私、捨てられちゃう……。
続きを聞きたくなくて耳を塞いだ私の両手首は彼の手に捕まって、壁に押し付けられた。
「唯の事、裏切ってたのは事実だ。ごめんって言っても、許してもらえるものじゃないよね。でも僕が唯の事だけを想っているのは本当だよ。それだけは信じて欲しい」
真摯な瞳で見つめられて鼓動が早鐘を打つ。
「子どもの頃沢山一緒に遊んだこと、唯は覚えてないんだよね。僕のお嫁さんになりたいって言ってくれたこと、僕は忘れられなかったよ。いつか君を迎えに行くつもりだった。
だけど唯が弱ってるのにつけ込んで結婚したことは自覚してた。だから唯が僕の事を本当に好きになってくれるまで待とうと思ってたけど……僕も男だからね」