第4章 3月。
システムエンジニアという横文字の仕事をしている賢一さんは、一日の大半を家でパソコンに囲まれて過ごす。5月に式を挙げた後、テストの点数がよかった私はご機嫌で家の扉を開いた。
「唯様、いけません」
玄関で鉢合わせたお手伝いさんは目を丸くしたけれど、私は呑気にリビングのドアノブに手をかけた。
え……?
ガラス越しに目に飛び込んできたのは信じられない光景で、あの後何度夢に見たのかわからない。
悲鳴のような嬌声も、耳について離れない。
「あっ……んっ、あぁんっ、気持ちいいっ、あぁっ。賢一さんっ、もっと、もっと突いてっ」
ソファの上で背を向けた賢一さんに組み敷かれていたのは、見知らぬ女の人だった。
見たくないのに目を逸らせなくて、服を着たまま女の人を貫く彼と一糸まとわぬ姿で足を大きく開いたまま高い声を上げる女の人を凝視していた私の肩をお手伝いさんが叩く。
「賢一様にもお考えがおありでしょうから……」
考えって、何なの?
私は子どもだからわからないの?
「賢一さんっ、いいのっ、いっちゃうっ、あぁんっ」