第3章 2月。
一重のわりに丸くて大きな瞳が俺を睨んだ後、彼女は冷たい声で言った。
「散々遊んでおいて面倒くさくなったら私で手を打つってこと? バカにしないでよ」
唯の言っている意味がわからず言葉が出てこない。もしかして俺、振られた?
「私の友達にも手出してたの知ってるんだよ。顔に釣られて寄ってくる女の子すぐ食べちゃうって有名なんだから。いつでもヤれるセフレが欲しいなら、他の子当たって」
背中は冷や汗が流れる。唯の目は氷のように冷たい。
違うんだ、唯。確かに俺、色んな子と遊んできた……。
でもそれは好きな女ができなかったからで、お前のことは本気なんだ。
どうしたらこの気持ちは伝わるんだ。
俺はフォークを握りしめ、唯の作ったケーキに突き刺して頬張った。
「俺が甘いもの嫌いなのは知ってるだろ? 食べられるのはお前の作ったもんだけだ。お前のことは本気なんだ。
頼む! 信じてくれ」
ハムスターのように頬袋を膨らませると、思わずといった様子で唯が吹き出した。
「バカじゃない」
「お前のことが好きだ。
本当にお前だけだ」
畳み掛けると、ついに彼女は目尻を下げる。
俺の好きな困ったみたいな笑顔。