第10章 9月。
「何だよ、それ……」
星夜、ちょっと笑ってる……?
「とにかくっ、星夜が人間じゃないとしても、そんな嘘はたいしたことじゃないってこと!
……ふふ、私たち嘘つきだね……」
笑ったつもりだったのに、同時に涙がこぼれてしまう。背中越しに小さな声で星夜が「本当に、俺でいいのか?」って呟いた。
「当り前でしょ。星夜じゃなきゃダメなの。狼でも何でも、星夜じゃなきゃダメなんだよ」
「俺も、本当は唯といたい。でも自分が信じられなくて、怖い……」
振り向かない星夜の前に回って、自分から唇を重ねる。キスには応えてくれなかったけど、構わずに私は舌を絡めた。
「星夜は、私のこと、はぁっ、食べなかったよ。んっ、姿が変わっても、ちゃんと、んっ、止まってくれた。だからっ、だい、じょうぶっ……んんっ」