第10章 9月。
長い舌が味見するかのように私の胸の舐め回す。どこから食べるか悩んでるみたいに。
私の身体は、金縛りにあったかのように動かない。
獣の肩越しに、厚い雲が流れて満月が顔を出しているのが目に入った。
熱くなるのが嫌い、夢中になるのが嫌って言ってた星夜。
自分がこうなることを恐がってたの?
誰にも本当の姿を見せないで、孤独だった?
「いい、よ……。星夜になら……。
私の、全部あげる……。
血の一滴も、残さずに食べて。
でも、痛くしないで、一気に……殺して」
星夜の目を真っ直ぐに見つめたまま、ここに噛みついて、と喉元を上げる。どんな星夜でも、私は逃げない。
覚悟を決めて、私は瞳を閉じた。