第9章 8月。
ため息をついて立ち上がった時、背後に気配を感じた。懐かしい香水の匂い。
充くんと同じ、ライトブルー。
「唯」
充くんと同じ、声。
……そんなわけない。あるわけない。
充くんは、病気で死んじゃったんだから。
出会った時から、彼の命が長くないことは知ってた。それでも私は恋に落ちるのを止められなかった。
脳の病気だったから少しずつ色々なことを忘れていって……それでも最後まで私を残していなくなることを心配してくれてた、最愛の人。
「僕がいなくなっても、幸せになって。また恋をして」
苦しそうに呟いた顔忘れない。……でも、無理だよ。
「唯」