第3章 暗れ惑う
「…その意見を呑むかはまだ迷ってます」
男は俯いて言った。
それに立ち上がって反論したのは、一期一振だった。
鶴丸国永との戦闘で重傷を負った一期一振だったが、この場にいると言って頑なに譲らなかったのだ。
「迷っている…?何を馬鹿なことを仰る!主が自ら、しかもたった一人で敵地へ赴くなど…!」
叫んだせいか、頭に血が上ったせいか、一期一振はそこまで言うとよろめいた。
あれだけの傷を負ったのだ、ここで座っているのも辛いはずなのに立ち上がったりするから。
それを咄嗟に三日月宗近が支える。
「一期、無茶をするな」
「すいません…。でも…」
一期一振はかなり大きな責任を感じているようだった。
元々責任感が強い質であるのに加え、己の兄弟が人質に取られたことは一期一振を追い込むのに十分である。
男が黙り込むと、三日月宗近も男の意見に反対だと口を開く。
「主の俺たちを大切に思うところは美徳であるし、誇りでもあるが、同時に欠点でもあるぞ。優先すべきが何なのか、考えてくれ」
三日月宗近の言うことは最もだった。
一振りの刀を失うか、一つの勢力をまとめる審神者を失うか。どちらが影響が大きいかなど、一目瞭然だ。