第3章 暗れ惑う
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男が中庭にたどり着いた頃、その場にいたのは重傷で動くのが困難なのであろう和泉守兼定と今剣のふた振り。
そして、姿を隠しているとばかり思っていた柚子と、いるはずのない歴史修正主義者だった。
男は思わずその足を止め、茫然と立ち尽くす。
「あるじ、くるな…っ」
呻くように、和泉守兼定が言った。
男はその言葉に後ずさる。
応援を、呼ばなくては。
そうは思うのに、身体はちっとも動かない。
だって、何で歴史修正主義者が。彼らはもう居ないはずなのに。
刀剣男士は穢れの気配を探ることができる。
それを試して、いないと彼らは言ったのだ。
なのに、どうして。
時空移転装置のゲートはまだ閉めたままであるし、空間だって閉鎖したままだ。
今剣と和泉守兼定しかいない理由は分かっている。
恐らく、男の指示通りに動いた刀剣男士の行動によってだろう。
彼らは人間である男より体力もあれば、機動力も何もかもが男と桁外れに違う。
だから、男の指示通り、気絶しているものたちを手入れ部屋に運ぶということを男がここに来るまでに行い、重傷である和泉守兼定と今剣はここで待機していたのだろう。
そして動けるものが去った瞬間に、柚子と一体の歴史修正主義者が姿を現した。