第1章 契り
「おはよう、つる」
男が返せば、鶴丸国永は髪を撫でる手を止め額にキスを落とした。
「目元がまだ少し赤いな。声も掠れてる」
ひとつひとつ、そのささくれ一つすらない指先でなぞって確認していく。
「水と白湯を持ってきてやる。初めてなのに、無理させてしまったからな」
手の甲で頬に触れられて、男はその手に擦り寄る。
大丈夫なのに、全く彼は心配性だ。
男は暫く鶴丸国永とじゃれ合うことで覚醒してきた意識で、そんなことを思う。
「だいじょうぶだって。もうすぐ朝餉だろうし、俺もいっしょに大広間にいく」
男がそう言えば、鶴丸国永はダメだといつもより神妙に言った。
「今は寝てるから平気だろうが、たぶん、君立てないぞ」
言われて気づく。
確かに、腰から下が鈍い痛みを持っている。
「それに、くり坊や和泉守には刺激が強い」
ん?
男はなんのことだか分からず、首を傾げた。
鶴丸国永は最年少と、意外と初な刀剣を頭に浮かべてひとりでに深く頷いた。
…本音はと言えば、ただこの主の色気だだ漏れの姿を見せたくないだけなのだが。
「まあ、つるが言うならしばらくは大人しくしてる」
「そうしてくれ。朝餉もここでとるか?ここで食べるなら持ってくるが」
「うん、ありがとう」
男が礼を言えば鶴丸国永は寝いる間に乱れた裾除けを正し、男の頭をくしゃりと適当にあしらってから「待ってな」と言い残し部屋を出て行った。