第3章 暗れ惑う
「主!」
息苦しさに何度も咳き込んでいれば、刀を片手にへし切長谷部が叫んだ。
男の元へ駆け出そうとして、しかしそれは歌仙兼定によって阻まれた。
振り下ろされた刀を咄嗟にかばい、競り合う。
「歌仙、貴様…っ!」
邪魔をするな!
へし切長谷部は叫んで刀を弾く。
しかし焦れば焦るほど攻撃は粗く雑になり、呪いでただ目の前の刀を殺すことしか頭にない歌仙兼定には敵わなくなる。
他のものはどうかと辺りを見回しても、皆似たような状況だ。
男のもとへ行くのは叶いそうになかった。
「けほっ…」
男はなんとか呼吸ができるようになると、未だ掴めていない状況を把握するため上半身を起こし、先程まで自分のいた場所を見つめた。
そこにいたのは、やはり鶴丸国永だった。
その目はまだ、濁ったままだ。
鶴丸国永に攻撃されたという事実が、男の心臓をえぐる。
苦しい。
ここに彼がいるということは、一期一振はどうなったのだろう。