第3章 暗れ惑う
刀たちは皆現状に向き合っているのに、男は現実から目をそらして耳を塞いで眠りたいとすら思う。
さっきだって、本当は一期一振のためなんかじゃなくて、ただ柚子と向き合うのが怖いからあの場から逃げたんじゃないのか。
だってお前はこんなにも弱くて脆い。
心の内で、もう一人の自分が断罪を下す。
全てはお前のせいなのだと、目で訴えかけてくる。
男の刀たちが、身内で戦っているのは単に呪いがかかっているせいだ。主を守ろうと必死だからだ。
けれど最早それすらも男は自分のせいだと思い込む。
あまりにも傲慢な考えだ。
このまま自分がいなくなれば、彼らは争うことをやめるのだろうかなんて、馬鹿なことすら考えていた。
まるで茫然自失といった体の男に、次の瞬間、衝撃が走る。
ガッ、と鋭い蹴りが背中に入り、男の身体はいとも簡単に吹っ飛んだ。
飛ばされた勢いのままに、男の身体がゴッと鈍い音を立て地面に叩きつけられる。
全身を走る鈍い痛み。胸が圧迫され息が詰まる。
頭を打ったせいか、脳がぐわんぐわんと揺れた。
あまりの痛さと苦しさに、男の目には涙が浮かぶ。