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とうらぶっ☆続

第3章 暗れ惑う



一期一振は再び刀に手をかけた。
それに気づいた男が一期一振の手を強く掴む。

今この瞬間、男にとって一期一振は恐怖の対象でもあった。
もし、彼が考えていることが、自分の考えている最悪の事態と同じだとしたら。
彼がしようとしているのは、柚子を殺すか、或いはそこにいるであろう刀剣男士を動けなくなるまで追い詰めるかの何れかではないだろうか。

甘い考えだとは分かっている。
きっとこのことを知ったら男は少なくとも彼らからの信頼を失い、軽蔑されるだろう。

けど、それでも、見たくないのだ。
仲間同士で真剣に殺し合いをする姿など。彼らが、人を殺す姿など。

これは男のエゴだ。男が救われたいからだ。

傷ついた顔をして首を振る男に、一期一振は殺気を和らげることなくその手をそっとのけた。
あきらかな拒絶だった。叱咤だった。
きっと、ここにいる刀剣が一期一振でなくてもそうしていた。
だって、彼らは男を守るためにあるのだから。
主を傷つける可能性があるものは、出来うる限り排除する。

根本にあるものは、主であれ刀たちであれ同じものだった。
ただ傷つく姿を見たくない。

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