第3章 暗れ惑う
「…主、中に刀剣男士がいます」
唸るような声で、彼は言った。
そこには普段の一期一振からは想像もできないほど、冷たい怒気を感じる。
「ひとり…いや、 ふたりだな」
いつもの柔らかい神気はなりを潜め、ただ増していく殺気に男の背中に冷たいものが走る。
そして同時に、一期一振の言葉に少なからずショックを受けた。
「呪いを使ったか」
吐き捨てるように言った言葉に、こんのすけが尻尾を垂らして隠すように丸まった。
「一期、中にいるのは誰か分かるか」
男は声を低くして尋ねる。
刀剣男士によっては応援を呼ばなければならないからだ。
「…そこまでは」
相手の神気が探れなくなっている。
それは主の神気が呪いにより塗り替えられたからだけではない。己にかかっている少しの呪いが、感覚を鈍らせていた。
その事実に気づいて、一期一振は心の内で舌を打つ。
とんだ失態だ。唯一無二の主をこんな目に合わせている。
ちがう、今はこんなことを考えている場合じゃない。それをするのは全てが終わってからだ。