第3章 暗れ惑う
「審神者見習いの柚子ちゃんが、歴史修正主義者側の人間だったんだ。どうやってここの本丸に招き入れたかは知らないけど、彼女が黒ということは間違いない」
「留守のやつらはどうした」
「……分かんねぇ」
山姥切国広が舌打ちと共に、刀を振るう。
その切っ先が敵の胴を掠めて、相手はたたらを踏んだ。
そしてその機会を淡々と狙っていたように、骨喰藤四郎が後ろから敵へととどめを刺す。
「はぁッ!」
振り下ろされた刀は、違わず相手の首を刎ねた。
「ひっ…」
ドシャと音を立て男のそばに落ちた首に、思わず情けない声が漏れる。
切断面からは黒い瘴気が出、敵の頭だったそれはすぐに消えた。
間も無くして、胴の方も消える。
「き、消えるのか……」
おっかなびっくりしながら男は呟いた。
山姥切国広と骨喰藤四郎がいるということは、遠征に出ていた第二部隊は全員戻ってきたのだろう。
他にも注意を向ければ、確かに戦闘中であることが伺える音が聞こえた。
「主!第一部隊が帰還しました。ゲートを封鎖します!」
未だどこか現実味のないその光景を呆然と眺めていると、一期一振が駆けてきてそう言った。
男はそれにはっとして、一度深呼吸をする。
ばかか。まだやることは沢山ある。頼るだけになるな。立ち上がれ。
従者が主に尽くすなら、主はそれに応えなければならない。
後悔したくないなら、自らの手で守り抜け。
ぐっと手に力を込め、立ち上がった。