第3章 暗れ惑う
しかし、覚悟していた痛みはやって来ない。
代わりに、ガキィンと鉄と鉄が強くぶつかり合う音が聞こえる。
男は恐る恐る目を開けた。
見えたのは、決して綺麗とは言えない、けれどいつだって男の傍にある、白い布。
いちばんの信を置いている、彼の初期刀。
「くに、ひろ…」
目を見開く。
無意識に口にした名前は、掠れてなんとも情けない音だった。
「無事か」
山姥切国広は歴史修正主義者と競り合いながら、男に問う。
男はそれに頷き返して、絶対的な安心感に体の力が抜けへなへなとその場に座り込んだ。
「…一体どうなってる。なぜ俺たちの敵がここにいる」
ぎりぎりまで競り合って、山姥切国広は相手の刀を器用にいなしはじく。
敵がよろめいた所へ、間髪入れいれずに攻撃を打ち込んだ。
男はその姿に見惚れながらも、こんのすけに足でたしと促され分かっている範囲のことを伝える。