第3章 暗れ惑う
一期一振が部屋から出ていき、男の吐き気が幾らか和らぐと、男はこんのすけを連れ立って外の様子を伺うために縁側へと足を向けた。
部屋を出た途端、太陽が隠れいかにも不穏な雰囲気が出ているのに眉を顰める。
そしてあれだけの警報音が鳴っていながらも、刀剣男士の姿が見えないことに不安と、同時に確信を持った。
男の後ろをついて歩くこんのすけが、訝しむような声で問う。
「しかし、なぜこの本丸が特定されたのでしょうか?ゲートだけならともかく、空間をむりやりこじ開け侵入してくるとなると、内通者がいない限り不可能なはずです…」
「……内通者がいたんだ」
「!…まさか」
「そのまさかだよ。審神者見習いの柚子って子が、歴史修正主義者だ」
吐き気が治っても尚顳顬を伝う脂汗は、恐怖と不安と焦りからくるものだった。
和泉守兼定が言っていたにも関わらず、あと数日だからと勝手に白だろうと判断した自分のせいだ。考えが甘かった。
男は思わず舌を打つ。
幸い歴史修正主義者は男の場所を特定していないのか、まだ襲ってこない。動ける今のうちに刀剣男士の様子を見に行くのが吉だろう。
心当たりはある。
そこへ行けば彼らの様子を把握できるし、何かしらアクションがあるかもしれない。
できるだけ気配を消して、彼らの元へ向かおうとしてーーーーー肌に刺さる殺気と禍々しい空気、そして明らかな穢れを感じて男は振り返った。
「っ!!」
息を呑む。
…見つかったーーーー