第3章 暗れ惑う
なんだ。何が起きてる。この警報音は何だ。主の身に、一体何があった。
考えて出てきた答えは、自分たちにとって最悪なものだった。
そんなはずは…いや、でも。
ぐるぐると回る思考と、一向に回復の見込みが見られない男に、一期一振の顳顬に汗が垂れる。
どうしよう。どうすればいい。自分が今取るべき行動は何だ。
混乱する思考を落ち着かせようとしていれば、突如、目の前にポンと煙を立てこんのすけが現れた。
「審神者様!」
それに気づいた男は、苦しさにあえぎながらもこんのすけへと状況確認、及び指示を出す。
「こんのすけ、状況を」
「はい、たった今、こちらのゲートを歴史修正主義者が通ったのを確認。この警報音はその為かと。更にゲート以外からも歴史修正主義者の侵入を確認。審神者様に出ている症状は、その影響でしょう」
「…っ、う、」
「主!」
「ゲートを一時的に封鎖、この本丸の空間も一時的に閉鎖しましょう」
「頼む。いちご、」
「無理に喋らんで下され」
「んなこと言ってられっかよ…、第一部隊と第二部隊に通達だ。本丸内に歴史修正主義者の侵入、それからゲートを閉めるから至急戻るようにと」
「しかし、今主のそばを離れるのは…!」
「一期!!」
渋る一期一振にきつく名前を呼べば、彼は苦虫を噛んだような顔をして渋々といった体で分かりました、と頷いた。
近侍は主を守るためだけにそばにいるんじゃない。
審神者の補助としているのだ。
それはつまり、その時々の状況に応じて何を優先すべきか考えて行動しなければならないということ。
こんな状態の主を放って為すべきことをしろ、など、それが一期一振にとって厳しくて難しいことだと分かってはいる。
しかし、それで何も守れなければ、それは男の存在意義すらも奪うことになってしまう。