第3章 暗れ惑う
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その日、男の本丸はいやに静かだった。
秋田藤四郎を鍛刀して数日、柚子が見習い期間を終えるまで一週間を切った。
今日の出陣や遠征は、全て柚子に任せている。
部隊の面子の確認はしているが、指揮をとっているのは柚子だ。
本人には言っていないが、これは最終テストである。
審神者として適切かどうか。男が今回のテストで判断し、それにより見習いが審神者につくかどうかが決まる。
テストに受かれば研修後すぐに自分の本丸が与えられ、逆に落ちればもう一度筆記試験からやり直しとなる。
この調子だと柚子は合格だろうが、どうしてか男の胸を占めるのはいやな予感ばかりだった。
出陣部隊には、念のためにと全員にお守りを渡しているし、危なくなれば部隊の隊長を務めているへし切長谷部が判断を下すだろうから、折れる心配はしていない。
ならば、何故。
男は溜まった唾を無理矢理飲んで、眉間をもんだ。
不意に、一週間以上前に言われた言葉を思い出す。和泉守兼定の言葉だ。
あの審神者見習い、俺は黒だと思う。
どうしてそれを今思い出す。うんざりして、ため息を吐く。
あの後、柚子を注意深く見ていたが怪しいことは何一つなかったし、男は白だと踏んでいたのだが違ったのだろうか。