第3章 暗れ惑う
鍛刀のやり方を一通り説明し終えた後、男は緊張した面持ちで鍛刀場の妖精に手伝札と依頼札の二枚を渡した。
それから程なくして、鍛刀場いっぱいに桜が舞う。
視界を覆う薄桃色がはらはらと床に落ちた頃、そこにいたのは小さな子供だった。
桃色のくせ毛に、まるで青空をそのまま写したような瞳。軍服を身にまとっており、胴には胴鎧がつけられている。
愛くるしい見た目に違わず、目の前の子供は無邪気に笑って見せた。
「秋田藤四郎です。外に出られてわくわくします」
秋田藤四郎、と名乗った声は存分に子供らしさを含んだそれで、男はたまらず破顔した。
「俺はここの審神者だ。よろしく、秋田」
男が手を差し出し自己紹介すると、秋田藤四郎はその手を小さな両手でぎゅっと握って言う。
「こちらこそよろしくお願いします、主さま」
男は自分の自己紹介が終わると、次に柚子を紹介した。
微笑ましそうに見守っている石切丸の視線を背中に感じる。
「彼女は審神者見習いの柚子ちゃん」
男の言葉に柚子がぺこりと頭をさげる。
「あと少しの間ですが、よろしくお願いしますね」
柔らかく微笑んだ柚子に、秋田藤四郎も元気に返事を返した。