第2章 審神者見習い
鶴丸国永が部屋から出て少ししてから、男は和泉守兼定に熱いお茶を出してやる。
いつもより緊張した面持ちは、男の緊張を誘った。
「主、」
けれど呼ばれた声は先ほどの憂いを感じさせない、凛としたものだった。
こういう時、男はこの刀がかの有名な土方歳三の刀だったことを思い知る。
「あの審神者見習い、オレは黒だと思う」
強い意志を宿した瞳に、堅い声。
和泉守兼定の突然の言葉に、男は息を忘れた。
数秒、己の周りの時が止まって、ようやく我に帰った頃には米神に汗が流れていた。
言葉を理解できなくて、男の口からは意味のなさない音ばかりが溢れる。
「は……、な、に…」
目の前の和泉守兼定は、そんな男から視線を外すことなく自分の考えを述べる。
「…なんつーか、違和感、て言えばいいのか?あの女、匂うんだよ」
口の中が渇く。
心臓が嫌な鳴り方をする。
なぜか心がざわついて、ひどい焦りを覚える。
全身の血が逆流するような、気持ち悪さ。
人はこれを、嫌な予感と言うのだろうか。