第2章 審神者見習い
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本丸に帰ったその晩、男の自室には和泉守兼定が訪ねてきていた。
鶴丸国永とじゃれあっていた男は、パンチ一つで鶴丸国永のじゃれあいと言うには行き過ぎた悪戯を止めさせ、和泉守兼定と向き合う。
「きみ最近本当に俺の扱い乱暴だな?」
「いや、ごめん。つい」
「……なぁ、オレ話したいんだけど」
目の前にいるというのにすぐ二人の世界に入る男と鶴丸国永に、呆れながら和泉守兼定が言う。
それにコホン、と咳払いしつつ、男は背筋を伸ばして真剣な顔をした。
「すまん。それで、話って?」
男が問えば、和泉守兼定は目を伏せ憂うように睫毛を震わせた。
そして鶴丸国永の方を見て、次に男を見やる。
和泉守兼定の言いたいことを汲み取った男は、鶴丸国永の方を見て名前を呼んだ。
「つる」
それだけで男の言いたいことを悟った鶴丸国永は、ため息を吐いて右手で頭をかく。
この場にいようとした鶴丸国永を咎める男の視線は、恐らく鶴丸国永がこの部屋を出るまで向けられるのだろう。
「…分かったよ」
渋々立ち上がった鶴丸国永に、男が眉を下げ微笑んだ。
その顔に、鶴丸国永は滅法弱い。
「終わったら鶴の部屋に行くから」
「ああ、待ってる」