第2章 審神者見習い
それぞれ好きなものを二本ずつ頼み、ほとんどが食べ終わる頃になると、加州清光と乱藤四郎が柚子を連れて甘味屋にやってきた。
「あー!主さん団子ずるい!」
「お前らどうせパフェとか食べてきたんだろ…」
「何だ、ばれちゃった?」
「ねえ、それより主に見て欲しいんだ」
「ん?」
そう言って乱藤四郎と加州清光は顔を合わせ、悪戯っ子のように笑った。
それからせーのっと声を合わせて、柚子を男の前へ押し出した。
「わっ…」
押されて驚いたのか、漏れた声は柚子のものだった。
その柚子はと言えば、それはそれは綺麗に着飾られていた。
シンプルでありながら、しかし地味さを感じさせないデザインに、小さく散りばめられている桜が可愛らしさを引き立てている。
更に髪は一つに後ろでまとめ、かんざしが差してある。
朝うっすらしてあった化粧は少しだけ変えられ、目元に薄桃色を、唇には朱を。
きれいに着飾られた柚子がそこにいた。
「へぇ、似合ってるじゃん。かわいい」
男が素直に抱いた感想を口にすれば、柚子は顔を赤くした。
男の言葉に乱藤四郎と加州清光はどこか得意げだ。
「お金足りた?」
「よゆーだったよ!あ、柚子さんが来てる着物ね、ボクと清光が選んだの!」
「さすがだな、二人とも」
乱藤四郎が嬉々として言う言葉に、男は乱藤四郎の頭を撫でてやる。
それから思い出したように、男は懐から小袋を取り出した。
そしてそれを柚子へと手渡す。
「これ、さっき見てた時にいいなって思って買ったんだけど、よかったら受け取ってくれる?」
「いいんですか?」
「おう。開けてみて」
言葉の通り、柚子は小袋を開ける。
その様子を刀剣男士は見つめていた。
中から出てきたのは、所謂匂い袋と呼ばれるものだ。
「いい香り…、ありがとうございます」
柚子は手の上に乗せその香りを楽しむと、無邪気に笑ってみせた。