第2章 審神者見習い
柚子は迷っていた。
三日月宗近に言われた通りに道を進んで十数分。
進めど進めど目的地にたどり着かないのは何故なのだろうか。
…いや、原因は分かっている。
この日本家屋が広すぎるせいだ。
困ったなぁ、と柚子は廊下で立ち止まった。
戻るにも道が分からないし、もうどうすればいいのやら。
しかしそうして立ち止まっていると、そこへ救いの手が伸ばされた。
柚子の目の前からやって来たのは、全身が白で覆われた美しいひとりの刀であった。
その背には男を背負っている。
柚子はほっと胸を撫で下ろして、男を背負っている刀剣男士ーー鶴丸国永の方へ足音を立てないように駆け寄った。
「あのっ」
そして声をかけると、彼はおっかなびっくりしたようにパチパチと瞬きをしてから、ふわりと優しく笑って問いかけた。
「どうかしたか?」
「いえ、その、迷ってしまって…」
控えめにそう言えば、彼は大体を察したらしい。
納得いったと言うような顔をして言った。
「ああ、ここは広いからなぁ。迷うのも仕方ないさ。主を探してたんだろ?何か用があったのか?」
「はい、実は…」
柚子が先ほど三日月宗近たちにもした説明をもう一度すると、鶴丸国永は男を背負い直して視線を向けた。
相変わらずぐっすり夢の中らしい男は、結局あの場から動く気配がなかったので鶴丸国永が背負ってきた次第である。
今起こしても起きないだろうし、起きたとしても寝ぼけてて会話ができるかすら怪しい。
鶴丸国永は暫く考えて、一つ浮かんだ案を提案した。
「君がよければだが、今日だけ俺の部屋を使うか?」